眼鏡越しの恋
「本当はいい機会だからコンタクトにさせたかったんだけどね。瀬能君にああ言われたら、無理やりさせられなくなった」


「なっ!」


大げさに眉を下げて残念がるお兄ちゃんに、私は声を上げた。
顔が火照るように熱くなって、きっと真っ赤になっているだろう。


お兄ちゃんに言われて、私もさっきの匡の台詞を思い出してしまったから。


「祥子の素顔は危険だからもう懲り懲りだ」


匡が本当にうんざりしたような声で溜息を吐くから、私はズキンと胸が痛くなった。
さっきはメガネでも綺麗だとか言ってくれたのに、素顔の私はダメだったってこと?


不安な視線を匡に向けると、匡はもう一つ、大きな溜息を吐いた。


「ほら、何もわかってねぇし・・・・・お前の素顔に学校の奴らがどんな反応したのか忘れたのか?みんなお前が想像もしてねぇくらい美人だったからびっくりしてただろ。しかも男なんて・・・」


そこまで言って今日は「はぁぁぁ~」とまた盛大に溜息を吐き出した。


「ぷっ。そんなにみんなびっくりしてたんだ?それはさぞ面白かっただろうねぇ」


「・・・面白くなんてない」


「男の子達の祥子に対する視線がイヤだったんだ?」


「・・・・・・・・」


面白がるようにニヤリと笑うお兄ちゃんに匡は無言で睨むような視線を向けた。
そんな匡にお兄ちゃんはまた可笑しそうに声を上げて笑った。


二人の会話を聞いていた私は、さっき感じた不安とは違うドキドキで心をいっぱいにしていた。


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