眼鏡越しの恋
だって。
匡がこんなにも不機嫌そうな原因は、メガネのない私を見た周りの反応ってことで。
男の子達がどんな風に私を見ていたのかはわからないけど、それが嫌だって思ってくれてるってことは・・・
「瀬能君、独占欲強いね」
私の心に浮かんだ言葉をお兄ちゃんが口にして、私は一気に顔が真っ赤になった。
「悪いですか?」
お兄ちゃんの言葉に匡はムッとした声で訊き返した。
「ううん、全然。瀬能君ってメチャクチャ男前だから最初、ちょっと心配だったんだけど、俺が思ってた以上に祥子を溺愛してくれてるみたいで安心した」
お兄ちゃんがにっこり笑ってさらっと言ってのけた言葉に、私の頬に集まる熱が更に温度を上げる。
溺愛って・・・そんな言葉、よくさらっと言えるな。
動揺する私をよそに、当の匡はまったく意に介さないのか、当然というような顔をしている。
それがまたお兄ちゃんには面白いのか、ニコニコと気持ち悪いくらいご機嫌になった。
「瀬能君、キミいいね。気に入ったよ。祥子ってこんなだから色々大変だろうけど、俺はキミを応援するよ」
「ちょっ、こんなって何よ!?応援って・・・意味がわからないし」
「鈍いお前にはわかんないだろうな。瀬能君、頑張って」
私の抗議の言葉も軽くスルーして、お兄ちゃんは匡の肩をポンポンと軽く叩いた。
「・・・はい、ありがとうございます」
反論するかと思った匡もなぜかそれに真面目な顔をして頷くから、私の動揺はますます大きくなるばかりだ。
私って、そんなにダメな女??
焦る私に視線を向ける二人は、呆れるような顔をしている。
お兄ちゃんは笑っているし、匡は溜息を吐いているし。
でもそのうち、二人が顔を見合わせて笑い出した。