眼鏡越しの恋
お兄ちゃんと長話をしてしまって、匡とショッピングセンターを出た頃には、西の空は紅く染まっていた。
貸し出してもらったメガネをかけているから、視界もはっきりしてちゃんと一人でも歩けるのに、匡は行きと同じように私と手を繋いで歩いてくれる。
当たり前のように差しのべられたその手に自分の手を重ねて、一緒に並んで歩く。
それだけで、とても幸せだと思える。
ショッピングセンターから少し離れたところにある小さな公園へ少しだけ寄り道をした。
夕陽もずいぶん傾いている時間だから、そこで遊ぶ子供達ももういなくて。
私達以外、誰もいない小さな公園にひとつだけある二人掛けのベンチに並んで座ると、なんだかちょっとホッとした。
「なんかごめんね・・・うちのお兄ちゃんお喋りで」
「いや。さすがに同じ勢いでは話せないけど、アレはアレで楽しかった。俺が口数少なくても真也さんは全然気にしねぇし、結構、気遣ってくれてただろ?」
匡がすでにお兄ちゃんのことを名前で呼んでいるってことがまず驚きだ。
お兄ちゃんも帰り際『匡くんまた来てねぇ』って、ニコニコの笑顔で手を振っていたし。
正反対な二人がこんなにも早く打ち解けあうなんて、不思議過ぎるけど。
やっぱり私が大切に思ってる人達が仲良くしてくれるのは、単純に嬉しい。
それに、あのお兄ちゃんのマシンガントークの中に、お兄ちゃんなりの気遣いがあったってことを匡が理解してくれてたことが、もっと嬉しかった。
匡は確かに口数が少ないし、表情も豊かとは言えないけど。
その分、周りをちゃんと見れる人なんだってことを発見できた私は、やっぱり匡が好きだと・・・もっとずっと、好きって気持ちが膨らんでいた。