嘘つきキャンディー

「おい。」

「はい。」

「取り合えず座れ。」

「…はい。」


彼から少しだけ距離を開けた隣に座り、ただ真っ直ぐと前を見つめる。


隣から突き刺さるような視線。


絶対私のこと見てる!


冷や汗が一筋、背中の真ん中を伝うのを感じて、私は無性に泣きたくなった。


「なぁ。お前さ、」

「…はい。」

「返事はいいからこっち向け。」

「………。」


言われて、恐る恐る彼を見る。

目が合うと、彼の長い指が左頬にのびてきた。


驚く程冷たい感覚がして、思わず肩を震わせる。


「絆創膏。」

「え…?」

「剥いだんだ。」

「あ、…だって、恥ずかしいから。」

「だよな。」


ふっと目を細めて、いたずらっぽく笑う。

いつも学校で見せる爽やかな笑顔とは違うけれど、何だか少しドキッとする。


ていうか、絆創膏わざとだろ…。


「ところで“清水さん”。」

「ひ…っ!」


妙に“清水さん”を強調した形で切り出して、突然彼の長い腕が私の肩に回った。

いつの間にか詰められている、彼と私の距離。

ゾクッと嫌な寒気がして、私の腕にはさぞ鳥肌がたっていることだろう。


嫌な予感がすごくする。
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