嘘つきキャンディー


「清水さんの下の名前って、“みるくたん”でしたっけ?」

「…っっ!!」


彼は学校での“矢野先生”の口調で、ニヤリと悪魔のような笑みを浮かべた。


き、聞かれてた!!

そしてやっぱりこの人、矢野梓だ…っ!!


今更とも言える確信が、私の頭を駆け巡る。


終わった。あと残り一年を切った学生生活が、今呆気なく終わった…。


「“みるくたん”ねぇ…。
一体どこでそんな名を名乗ってんだか。」

「……べ、別に如何わしいお店とかじゃないです。」

「へぇ…。
つまり“如何わしくない何処かの店でバイトしてる”っていうのは認めるんだ。」

「はっ…!!」


彼を見ると、今だ口角は意地悪に上がったまま。


してやったりという顔だ。

やられた!コイツに嵌められた!!


「今高3だよなぁ。
この時期にバイトがバレんのは痛いんじゃねぇの?なぁ、みるくたん。」

「みるくたんじゃないし!
今はその名前で呼ばないで!!」

「みるくたんだろ?
なにお前、キャバクラ?」

「違うわっ!メイド喫茶、……っ!」


思わず感情が高ぶって言ってしまった。

今更もう遅いけれど、つい両手で口を塞ぐ。


「…お前チョロすぎだろ。」

「………。」


呆れたような、バカにしたような目で私を見るこの人に、私も自分で自分に呆れた。


チョロすぎだろ、私…。
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