嘘つきキャンディー
「どうしました?清水さん。
……あ、そこの扉ちゃんと閉めてもらってもいいですか?」
言いながら近づいてきた先生は、ニヤリとあの悪魔のような笑顔を浮かべた。
伸びてきた長い腕が、私の身体の横を通って背後の扉のドアノブを引く。
カチャン…と音を立ててゆっくり閉まった扉に、私はぼんやりと納得した。
そういうことか。
やっぱり昨日のは、夢じゃなかった…。
そのまま扉に片腕をついた先生の身体と扉の間に、私の平均よりも少し小さめの身体はいとも簡単に閉じ込められる。
「昨日ぶりですね、清水さん。」
「…先生が必要以上に関わるなって言ったんですよ。」
「バーカ。俺だって関わりたくて関わってんじゃねぇよ。
必要だから関わってんだろ。」
面倒臭そうに頭をかくと、矢野先生は私からあっさり離れた。
「え…、私てっきりまた脅されるかと。」
「教師が生徒脅すかよ。」
「……昨日脅されたんですけど。」
「言っただろ。あれは取引。」
いや、教師が生徒と取引すんのもおかしいだろ…。
なんて思わず突っ込みかけたけど、私はそれを声には出さずに飲み込んだ。
言ったら殺されそうだ…。
「今日は清水さんにプレゼントがあるんです。」
「えっっ!!」
「あぁ、大したものではないので、期待しないでくださいね。」
“矢野先生”らしい爽やかな笑顔で言うと、デスクの引き出しから数十枚のプリントが束になった冊子を取り出して、私に差し出す。
「はい。」
「………え?」