嘘つきキャンディー

取り敢えず受け取って中を確認すると、どうやらそれは化学の問題集のようだった。


「何ですか、コレ…。」

「プレゼント。
お前春休みの課題出してないだろ。提出してないのお前だけだから、わざわざ作ってやったんだよ。」

「えぇっ?!私こんなのいらない!!」

「だから期待すんなって言ったろ。
週明けまでに春休みの分とそれやって持ってこい。」


先生はそれだけ言ってイスに座ると、その長い足を嫌味に組んで手でシッシッと追い払う仕草をした。


その様でさえも絵になるんだから、本当に腹が立つ。


「先生、私課題やりました。やったけど忘れました。」

「そんな小学生みたいな言い訳通じるかよ。」

「本当に忘れただけなのにっ…!」

「へぇ、そう。」


先生はすでにこの話に興味がないらしく、話している途中にも関わらず私には全く目もくれずに、デスクに山積みになった課題に目を通している。


あ、本当に皆出してる…。


その光景を実際に目の当たりにすると、なんだかそれ以上食い下がる気も失せてしまった。


幸い私は、そんなに勉強が苦手な訳じゃない。

せっかく作ってくれたんだし、週明けまでなら出来ないこともないか…。


「分かりました。やって来ます。」

「あぁ。」

「失礼しました。」


私は軽く頭を下げて化学準備室の扉の方へ向かうと、ドアノブを回した。


「…そういえば、」

「へ?」


出ようとした瞬間、後ろから矢野先生の声がして思わず振り返る。
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