嘘つきキャンディー
「お前、あのバイト辞めた?」
「あ……、はい。」
「そっか。」
思わず嘘をついてしまった。
だけど、矢野先生の心底ほっとしたような表情があまりにも正直で。
「あぁ、それだけ。もう行っていいよ。」
「はい。失礼しました。」
「あぁ。じゃあな。」
化学準備室を出てすぐ、罪悪感に襲われた。
心配、してくれている。
だからあんな顔したんだ…。
それがなんだか切なくて、申し訳なくて。
何故だか心臓の音が鳴りやまなかった。
今日は課題の提出日。
あの日から私と矢野先生が、必要以上に関わることは一度もない。