嘘つきキャンディー
私だって本当は、カメ男に全てを話してしまいたかった。
でも本当に怖いのだ。
皆が知らないだけで、口悪いし、『あ?』って返事が不良みたいだし、すぐ睨むし、正直この私が引くくらい矢野先生の素は酷い。
もし誰かに他言すれば…、
確実に殺される!!(社会的に)
「真名子、」
「ゴメン。まだ待って。」
「……。」
「…カメ男、ゴメン。」
カメ男はしゅんと眉尻を下げると、少し唇を尖らせて俯いた。
「私こそゴメン。
私、真名子しか友達いないし独占欲強いから、私の知らないところで真名子が変わっていくのが怖かったんだと思う。
真名子と私の間に秘密が増えたら、その分真名子が離れていく気がして…。」
「うん…。」
こんなに真剣に考えてくれていると思うと、話せないことが本当に辛くなった。
今までどんなことも話してきた仲だからこそ、カメ男も動揺するんだと思う。
カメ男に秘密を作ったのは、初めてだ。
お互い、かなり長い間自分達以外の友達はいない。
こんなんだから、いつの間にか依存心が強くなってしまっている。
「でも、いつまでも一緒なんて有り得ないよね。真名子も変わっていって、いつか私も変わるのかな。」
「私、変わってないよ。」
「…少しの変化だけど、前の真名子は何があってもあのバイト辞めなかったと思うよ。」
『チヤホヤされるの好きだもんね』と、カメ男はいたずらっぽく笑った。