嘘つきキャンディー
その後いつものごとく私とカメ男は駅で別れ、私は地元とは反対へ向かう電車に乗った。
約一週間ぶりのバイトに、何故か少し緊張する。
頼ってくれている店長には悪いけど、今日こそは言わなくてはいけない。
寂しいけど、安心の方が強かった。
これでもう、あの人に対して変な罪悪感を感じなくて済む。
バイト先に着くと、私は制服に着替えて直ぐに店長に事情を話した。
これまで休んでいたこと、今日でバイトを辞めたい理由。
急なことで本当に申し訳ないけれど、ストーカーされていることを相手はお客さんだということは伏せて説明したら、納得してくれた。
「本当にすみません。こんなことになってしまって…。」
「いいよ、いいよ。清水さん目当てで来るお客さん多いからすごく残念だけど、そういうことなら引き留めるわけにはいかないからね。帰りは僕が駅まで送るよ。」
「そんな、悪いです。」
「いいって!清水さんにはよく働いてもらったし、僕の気持ちだから受け取ってよ。」
人が良さそうな笑顔を浮かべる店長に、私はお礼を言ってホールへ出た。
最後のお客さんが帰ったのは、夜の22時をまわる僅か数分前だった。
今日一日ずっとホールでお客さんの対応をしていたけれど、この間私の後をつけていたお客さんは、今日は来店しなかった。
もしかしたら、あれから一度も店には来ていないのかもしれない。
きっとこの間の私は、彼の理想の“みるくたん”とは違っていただろうし。
その後店長とレジ締めや戸締まりをして店を出る。
結局店長の好意に甘えて、駅まで送ってもらうことにした。
今日も相変わらず、夜のこの街は騒々しい。