嘘つきキャンディー
カ、カッコイイ…。
矢野先生とは違って、一重瞼だけど決して細いわけではない、妙に色気のある切れ長の黒い瞳。
矢野先生も色っぽいけど、この人のはまた違った色気だ。
少し妖しいというか…、
「ねぇ、どうしたの?」
私が彼にボーッと見とれていると、キョトンとした表情で急に顔を覗きこんできた。
一気に近くなった距離に、益々心臓が早くなる。
「あ、あのっ…、えっと、」
「名前くらいさっさと言えよ。
“みるく”だよな?通称“みるくたん”。」
「な…っ!」
未だ私の手を引いたままの矢野先生に言われ反論しようとすると、黒髪のイケメンがいきなり私のもう一方の手を掴んできた。
「本当っ?!」
「えっっ?!」
「君の名前、本当にみるく?!」
訂正したいけれど、イケメンの瞳があまりにもキラキラしていてそんな空気じゃない。
もう、みるくでいいかもしれない…。
「……はい。」
「いや、はい。じゃねぇよ。」
思わず肯定の返事をしてしまった私に、矢野先生は呆れたように突っ込んだ。
その言葉に、イケメンは少し残念そうに眉尻を下げる。
「…違うの?」
「あっ、本名は確かに違いますけど…、でもさっきのお店で使ってる名前はみるくです!」
「そうなんだ!」
必死で弁解すると、イケメンは少し持ち直したようだ。
また先程のように瞳を輝かせて、掴んでいる手にさらに力が入る。