嘘つきキャンディー
「あれから大体一週間経ってるよな?」
「…はい。」
「俺に嘘ついて、一週間あの店でバイトしてたのか。」
いつもよりずっと冷たい声が、私を責める。
確かに嘘はついた。
けれど誤解だ。その間、私は…
「違います。」
「あ?」
「確かに先生に嘘はつきましたけど、その間バイトしてた訳じゃありません!
本当は辞める気なかったけど、先生が本当に私のこと心配してくれてたから、あの後罪悪感で暫くバイト休んで、その間ずっと迷ってたんですっ!
でもやっぱりちゃんとしなきゃって、それで今日、私…っ、」
言っている途中で、何故か言葉に詰まって涙が溢れそうになった。
別にこのくらいで泣くことないのにって自分でも思うけど、その意思とは反してどんどん涙が溜まっていく。
泣くな、泣くな、
何でこのくらいで…
でもなんか、矢野先生に冷たくされるのって、
傷つく…。
俯いて必死に涙をこらえている私に、矢野先生が困っているのが伝わる。
それがまた、虚しくなってくる。
やだ、こんな女…
面倒すぎる。
「おい。」
「………。」
「…顔上げろ。」
さっきよりいくらか優しくなった声が降ってきた。
けれど私の今の顔は、上げるわけにはいかない状況になっている。