嘘つきキャンディー

「先生、ありがとうございました。心配してくれて。」

「いいえ、どういたしまして。もうあのバイト先には行かなくていいんだろ?」

「はい。あ、でも制服返しに一回行くかも。」

「じゃあ、そん時は俺に言え。
学校ある日なら学校から送ってやれるし、ない日はここの駅まで来たら送る。」

「えっ!そんな、そこまでいいです!!」

「お前な、一回怖い目にあっててまだ懲りてねぇのかよ。
お前が殺されてからじゃ、俺は事情知ってる分しらを切るわけにはいかねぇんだよ。」


さらりと物騒なことを言って、矢野先生はいつものごとく面倒臭そうに頭をかいた。


先生のこの仕草は、クセなのだろうか。

先生がこんなことするって、私以外に知っている子はどれくらいいるんだろう…。


「お前知ってんだろ。俺のアドレスと番号。」

「えっ!知らないです。」

「…始業式の日に、担任と副担任の連絡先黒板に書いただろ。」

「……控えてないです。」


だんだん言葉尻が小さくなる私に、矢野先生はため息をついて手を差し出した。


「出せ。」

「え、」

「ケータイ。持ってんだろ。」


私は素直にスマホを差し出して、先生はそれをすいすいと操作していく。


「ほら、これ俺の連絡先だから。」

「あ…、ありがとうございます。」

「絶対言えよ。」

「…はい。」


返事をすると、矢野先生は『よし。』と、また優しく頭を撫でてくれた。
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