嘘つきキャンディー
「お友達も可愛いね。
…何か、緊張してる?」
「………。」
「すみません。この子人見知りで。」
完全にフリーズしてしまったカメ男の代わりに、私は苦笑しつつもフォローを入れた。
ついでに絶対に一人で自己紹介なんてできないだろうから、私の方から圭人さんに軽く紹介をしておく。
「彼女は亀尾凛々っていいます。小学生の頃からの友人で、同じ高校のクラスメイトなんです。」
「同じ高校?てことは、この子も梓の学校の子なんだ。
初めまして。僕は黒岩圭人っていいます。梓がお世話になってます。」
「ア、アズサ…?」
「矢野先生、って言ったら分かる?」
圭人さんがそう言った瞬間、カメ男は一瞬驚いたように目を丸くした。
けれど直ぐにどこか納得したような表情で、興味なさそうに残りのアイスミルクを飲み干している。
「矢野先生のご友人の方ですか?」
「まぁ、そうかな。あんまり驚かないね。」
「あ、えっと、なんか納得しました。少し似てるので。」
「似てる、かな…?」
「柔らかい雰囲気とか、人当たりの良い所とかが、少し。」
大分緊張が解れたのか、まだまだ声は小さいけれどカタコトでなくカメ男は続けた。
今度はそれに、圭人さんが不思議そうにカメ男を見つめる。
「…?あの、何か変なこと言いましたか?」
「いや…、梓って人当たり良くないよ?
それに柔らかくないし、どっちかって言うと、」
「あぁっ!!そう言えば圭人さん、まだ何も頼んでないじゃないですか!
すみませーん!!!」
これ以上は言わせまいと、私は圭人さんの言葉を遮って、わざと大声でメイドさんを呼んだ。