嘘つきキャンディー

今更気づいて言うのもなんだけど、なんて勿体ないことをしてしまったんだろう。

いつもの私なら、こんなチャンスを逃すようなことしないのに。


…あぁ、そうか。先生のことで一杯一杯だったから。


「勿論です。私ので良ければいくらでも。
でも、まさか圭人さんがそこまでして私の連絡先を聞いてくれるなんて、ちょっと嬉しいです。」

「実はね、真名子ちゃんの番号聞けたら絶対設定しようって思ってた着信音があるんだ。
真名子ちゃんにすごくピッタリだから、早く聞きたくて。」


圭人さんのスマホにメールで番号とアドレスを送ると、それを確認した後、圭人さんは何やら別の操作を始めた。

どうやらその私にピッタリの着信音とやらを、早速設定してくれているらしい。


まさか私専用の着信音まで設定してくれるなんて!

これはもしかして、圭人さんって私のこと、結構好き…?


スマホに真剣に向かう圭人さんをぼんやりと見つめながら、チラリとそんなことが頭を過る。

やっと操作が終わったのか、圭人さんは顔を上げると、極上の笑顔を私に向けた。


「ねぇ、真名子ちゃん。
ちょっと僕の方にかけてみて。」

「あ、はい。
わぁー、どんな着信音だろ…、」


圭人さんにつられて、私も満面の笑みを浮かべながら圭人さんのスマホに電話をかけてみると、控えめな音量でそれは流れた。



DokiDoki 高鳴るハート~
迎えにいくーよぉ~ 待っててよね~
きっときっと また会える~
遠くからーでもぉ~ 見つけるからね~
ミラクル起きるぅ 魔法ーかけてあげるー
今~呪文を唱えーるの~
ほらぁ~



軽快な音楽に乗せて、ポップで分かりやすい歌詞が耳に飛び込んでくる。

語尾に星やらハートやらが付きそうな甘ったるい声は、いかにも一部の男性が好きそうな可愛らしい女性のモノで。
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