嘘つきキャンディー
あ…、これ
アニソンだ……。
固まってしまった私を前に、圭人さんは満足そうに微笑むとその着信音を止めた。
「これね、前に話した『魔法少女 ミラクル☆みるく』のOPなんだ。」
「…えぇ、でしょうね。」
「可愛いでしょ?」
圭人さんの今日一の笑顔にも、私は乾いた笑いしか出てこない。
一瞬でも圭人さんが私のことを好きかもしれないなんて思った自分を、今すぐ殴り飛ばしてやりたい。
いや、好きは好きかもしれないけど…
「私が激似だから…。」
「ん?」
「いえ、何でもないです。」
改めて圭人さんの残念な趣味にガッカリしていると、今まで大人しかったカメ男が、突然勢いよく立ち上がった。
俯いていて表情は見えないけれど、その細い肩が微かに震えている。
「えっ、と…。カメ男?どうしたの?
もしかして怒ってる?」
「あっ、そっか!僕たちだけで喋りすぎたよね?ゴメンね。」
申し訳なさそうに圭人さんが謝ると、カメ男は俯いたまま、ふるふると小さく頭を左右に揺らした。
「あ、あの…、け、圭人さん。」
吃りながらも、カメ男は蚊の鳴くような声でポツンと言葉を落とす。
「?はい。なんでしょう。」
「あの、そ、それ…。」
ゆっくり腕を上げたかと思うと、震える指先で遠慮がちに指したその先には、圭人さんのスマホがあった。
圭人さんも不思議そうに首をかしげると、取り合えずカメ男の方へスマホを差し出す。