嘘つきキャンディー
「…スマホ?使う?」
「じゃなくて、イヤホンジャック…。」
「え…。イヤホンジャックって、」
『コレ?』と圭人さんがスマホから引き抜いたそれは、銀色の王冠から黄色の石をハート型にカットしたチャームがぶら下がった、やけに可愛らしいイヤホンジャックだった。
男の人のものにしては可愛らし過ぎる気もするけれど、誰かからのプレゼントだろうか。
圭人さんならモテるだろうし、あり得ないことでもない気がする。
「女の子はこういうの好きだよね。
もしかして気に入った?」
「…確かに、喉から手が出るほど欲しいです。」
「でもゴメンね。こればっかりはかなりのレア物で、」
「知ってます!!」
言いながら、同時に机にバンッと両手をつくと、カメ男は興奮気味に身を乗り出した。
いつもの無表情なカメ男とは打って変わって、瞳は爛々と輝き頬も心なしか上気している。
「それは、劇場版記念の全国SEHOシネマズ限定『魔法少女 ミラクル☆みるく』一番くじSA(スペシャルエー)賞、18Kホワイトゴールド特製イヤホンジャック“みるくモデル”!
一番くじのみの完全非売品で、世界に20点しかない超レア物!!
そんなものを、どうやって手に入れたんですか?!」
「もちろんくじで当てたんだよ。」
「そんな…、なんてラッキーなの。」
「ラッキー…?まさか。僕がただのラッキーでコレを手に入れたとでも?」
圭人さんはフッと鼻で笑うと、うっすらと口角を上げて言った。
「当たるまで、引き続けただけのことさ。」
「カ、カッコイイ…。」
………今の、カッコイイか?
珍しく男の人に対して頬を染めるカメ男に、私は呆れたようにこの人達のやり取りを見ていた。