嘘つきキャンディー
確かに、圭人さんは見た目だけでいうならかなりカッコイイ。
けれどどう贔屓目に見ても、今のは全然カッコ良くない。
寧ろカッコ悪い。
やっぱカメ男ってズレてるな…。
そこからのカメ男は、兎に角凄かった。
余程圭人さんと話が合ったのか、今まで見たこともないくらい饒舌にアニメ談義に花を咲かせていた。
今期アニメから来期アニメの話。
アニメ映画から、遂にはアニメ制作会社の未来まで。
私の知らない言語で生き生きと語り合い、その挙げ句に圭人さんが自宅にある数々のコレクションを見せたいなんて言うものだから、すっかりその気になってしまったカメ男と私は、圭人さん宅にお邪魔することになってしまった。
こうして冒頭に戻るわけだが…、
そう、皆さんお察しの通り、もの凄く後悔している。
断れば良かった…。
私は目の前の明らかに不機嫌そうな人物から冷たく見下ろされながら、まるで蛇に睨まれた蛙のように圭人さん宅の玄関で固まっていた。
こんなことになるなんて、分かっていたら断ったのに!
ていうか普段なら断るのに…!!
あまりにカメ男が楽しそうで、それにもうこれ以上奢りたくなくて、ただその一心でついてきてしまった。
私のバカ…ッ!
頭の中で何度も自分を罵りながら、私はチラリと矢野先生を見上げた。
目が合うと、微かに瞳を細める。
「こんなところで立ち話もなんですから、取り合えず上がりませんか?
何もお構いはできませんが。」