嘘つきキャンディー

そう切り出すと、先生は一瞬眉を寄せた。


何かマズかっただろうか。


「あー…、圭人に聞けよ。」

「…?」

「そういうのは俺に聞くことじゃねぇだろ。俺が全部話していいことじゃない。」

「あっ、はい。そうですよね…。」


ズケズケと聞きすぎたのかもしれない。


ハッキリと突き放されて、私はしゅんと項垂れた。

何だか自分が恥ずかしい。


「…何だよ。そんな落ち込むことねぇだろ。
別に怒った訳じゃねぇよ。」

「分かってます…。」

「…無意識にこういう言い方になるんだよ。気にすんな。」


言いながら先生は、私の頭に掌を寄せる。

ふんわりと爽やかなコロンの香りが、微かに鼻腔を擽る。


あ、先生の匂い…。


目線だけで先生を見上げると、ふと、目が合った。

その瞬間、私の頭に先生の掌が触れる直前で躊躇うように動きが止まった。


「…先生?」

「あ、いや…。そういえばお前、ここ最近俺のこと避けてただろ。」

「え、」

「心当たりならある。お前が露骨に避けだしたのも、あの後だしな。“あれ”は俺が軽率だった。
今も…。俺は立場を考えずに、お前に簡単に触れるところがある。」


『悪かったな』と、先生は腕を下ろした。


先生の言った“あれ”とはきっと、あの日、一瞬だけど私を抱き締めたことだろう。

確かに、私はあの日を境に今まで以上に先生を意識するようになった。


……でも、謝ってほしくない。
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