嘘つきキャンディー
「な、何言ってるんですか?
別にちょっと触れられたくらいで、まさか私が先生のことを意識しているとでも?」
「…は?いや、」
「大体!そのくらいで今時の女子高生が落ちるわけないじゃないですか。
しかも私なんて、掃いて捨てるほど男が寄ってくる超絶美少女ですよ?選びたい放題のこの私が、そんなちょろっと触れられたくらいで先生のことを好きになるわけないでしょう。
自惚れないでいただきたいっ!!」
仁王立ちになってビシッと人差し指を突き出して隣を見ると、先程居たところよりも明らかに後退りしたところに先生は居た。
先生の表情はというと、可哀想なものでも見ているかのように若干眉が下がっている。
「な、何引いてんですかっ!!」
「だってお前…、」
「恥ずかしいのは先生の方でしょ?!このナルシスト!!」
「いや、お前だろ。恥ずかしいの。」
冷静なトーンで言われて、徐々に顔に熱が集中していく。
確かに、今のは私が恥ずかしい。
しかも『今時の女子高生が落ちるわけない』なんて言っておいて、ちゃっかり自分は落ちてしまっているわけだし。
「それに俺は、お前が俺のことを好きなんて一言も言ってねぇ。
俺はお前が、俺のことを警戒してるんじゃないかって意味で言ったんだ。」
「……え。私そんなこと言いました?」
「言ったよ、バーカ。」
先生はそう悪態をつくと、私にベッと舌を出した。
う、うおおぉぉぅ。死にたい…っ!!
「でも、そっか…。別に警戒してたわけじゃねぇんだな。」
頭を抱え踞っていると、先生がホッとしたような声でそう呟いたのが聞こえた。