嘘つきキャンディー
なんだ。やっぱり気にしてたのか…。
ゆっくり頭を上げて横目で先生を盗み見ると、メガネの奥の瞳を優しく細めて微かに笑っている。
それが普段学校で見る先生のどの笑顔よりも柔らかくて、心底嬉しそうで。
私は再び顔が赤くなっていくのを感じて、急いで立ち上がって先生に背を向けた。
あ、あれは反則でしょ…!!
「あ、でもそれじゃあ、何でお前俺に連絡しないで制服返しに行ったんだよ。」
「……へ?制服?」
突然そう話を振られて、私は思わず先生の方を見た。
その瞬間、先生の瞳が驚いたように見開かれる。
「お前…、赤っ。」
「な、な…っ!!」
「その反応…。まさか、お前本当に、」
「何ですか?!別に今日は朝から熱っぽくて!ただそれだけですけど?!
それより制服がどうしました?!」
未だに何かを疑っているような目で私を見ている先生に、私は無理やり話を戻した。
すると先生も、納得はしていないようだけれど話を続ける。
「お前が前やってたバイトの制服だよ。
連絡しろって言ったのに、お前今日亀尾と返しに行ったろ。」
「え。何で…、」
「やっぱりな。
今朝圭人がメイド喫茶に行くって言ってたから。どうせその時偶然会ったんだろ。」
なんて察しが良いのか…。
私の反応で確信はしたようだけれど、どうやらほとんどバレていたらしい。
「お前、分かりやすいな。
嘘が下手な癖に、嘘や隠し事が多い。」
『そんなに俺の世話になるのが嫌なのかよ』と、先生は拗ねたように睫毛を伏せた。