嘘つきキャンディー

店内に入ると、先生はすでに選び終えたのか、お弁当を二つ手に持っていた。


「早いですね。」

「俺と圭人はいつもコレなんだよ。」


見ると、二つとも『塩ダレカルビ弁当』と書かれたシールが貼ってある。


「いつもって…、いつもコンビニ弁当なんですか?」

「大体な。俺も圭人も料理しねぇし。」

「…毎日は身体に悪いですよ?」

「たまにはサラダも買うから大丈夫。」


何だそれ…。全然大丈夫な理由になってない。


とは言え、『私がご飯作ってあげますよ!』なんて絶対言えない。

割りと得意だし作ってあげたいけど、言ってはいけない。


悶々と考え込んでいると、見かねた先生から後頭部を叩かれた。


「いいから早く選べ。」

「…はい。」


考えるのをやめて、今度は真剣に商品棚を見つめる。


カメ男は何がいいかな。アイツ好き嫌い多いから面倒臭いな…。


野菜はほとんどダメ。肉も鶏肉以外全部ダメなカメ男には、コンビニスイーツくらいしか買えるものがない。


あ。このチーズフロマージュ美味しそうだな…。

あ、カメ男はチーズもダメか。

それになんか先生が奢ってくれそうな雰囲気だし、やめとこう。


コンビニスイーツは諦めてしばらく悩んでいると、私はふと目に入ったデミグラスソースのオムライスを手に取った。

そういえばカメ男は、メイド喫茶で『あまえんぼうにゃんこのオムカレー』を絶対食べると言っていたんだった。
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