愛を囁いてもいいですか。
――『え、美沙子、打ち上げ来ないの?』
「うん、ごめんね、梓。」
試合が終わって数分後。
選手控室で行為を済ませていると、隣のロッカーで支度をしてる梓が声を荒げた。
『今日のメインは美沙子なのに!』
「ごめんって。今日は用事があって、どうしてもいけないの。」
『何それー?』
私が不参加なのがそんなに納得いかないのか、ぶーっと頬を膨らませていた。
『梓、察してやってよ。言ったでしょ?』
『ぁあ、美沙子、今日お見合いだったんでしょ?』
「え!?何で知っ――」
シャワー室から出てきた真奈美のしてやったりのニヤケ加減で察した。
こいつ、皆に私が合コンしたってこと言いふらしたな。
『今も、カレが待ってるんだよねー?』
「もうっ!いいでしょ、別に!じゃぁね!お疲れ様!!」
プライバシーの損害もいいところだけど、真奈美を怒るより先にあの人が待ってることを優先した。
初対面で放置させたら失礼!
仮にも香坂さんの息子さんだし、お医者様だし!!
こうして走りにくいドレスにイラつきながら、私は彼のもとへと急いだのだった。