愛を囁いてもいいですか。
「――香坂さんっ」
市民体育館の玄関から出ると、喫煙スペースでタバコを吸う香坂さんを発見した。
『完全勝利、おめでとう。』
「えっ、あ、いえ…!ありがとうございます…。」
香坂さんの極上スマイルに赤面する私。
これだからイケメンは苦手だ…!
小さなころからバスケしか頭になかった私は、男の免疫が全くない。
『お腹空いただろ?』
「え?…あ、確かに、空きましたね。」
試合中は、興奮してアドレナリンが出ているからか、まったく空腹とか感じなかったけれど、今はエネルギーの消耗のし過ぎで、お腹ペコペコだった。
『じゃぁ、夕飯食べに行こう。奢るよ。』
「えっ、でも…!」
『今日の試合、勝ったご褒美。な?』
「っ…!」
絶対この世の女の子全員を悩殺してしまうようなキラースマイルを向けられて、拒否することは困難で。
『ま、ご褒美なんて、君をこのまま帰したくないっていう僕のワガママなんだけど。』
その上、そんなことを言われて頭を撫でられたら、勘違いしそうになる。
この時、ちょっとでもタバコの香りっていいなって思ってしまった自分は、もう香坂マジックにかかっているような気がした。