愛を囁いてもいいですか。
――家の前。
「今日はありがとうございました。試合に付き合っていただいた上に、ごはんも奢ってもらって…。」
『いや、いいんだ。僕がそうしたかっただけだから。』
やわらかい笑顔でそう言った香坂さんに、ちょっとドキッとしてしまう。
「じゃぁ、私はこれで――」
『待って。』
車を車庫に入れ、車のキーを受け取った私は、家に入ろうと背を向けると、掴まれた手首。
「…香坂さん?」
『准。』
「え?」
じゅん…?
『僕のことは准でいいから。』
「ぇ、ぁ…はい。」
そう言われて、そういえば香坂さんの下の名前が准だったことを思い出す。
「准さん…どうかしました?」
いまだ掴まれている手首を見て、まだ彼が何か言おうとしているのだと察した。