ドS×刑事
新米刑事
ーーードクンドクン
あぁ
まだ心臓がバクバクしてる。
私は北山恵美。20歳の、新米刑事
おじいちゃんが刑事総監、お父さんが刑事部長という、刑事一家に囲まれて育った私。
そのせいか、昔から『おじいちゃんやパパみたいな、立派な警察官になって、悪い奴をこらしめてやる!』
なんて夢を持っていた。
そして努力の末、なんと本庁に配属。それだけで私には凄いことだった。
まだ新米刑事の私。
ここで頑張っていこう!…なんて思って仕事に励んでいました。
父との約束、『訓練学校を首席で卒業』というのを無事に果たし、安心していた私だったが
ある時おじいちゃんに突然呼び出されたのが、事の始まり
『お前は今日から本部の捜査一課の方に移動することになった。』
『……へ?』
てっきり何かして怒られるのかとばかり思っていたが、祖父の発した言葉は違っていた。
『…ん?ち、ちょっと待って!!え!?そ、捜査一課ぁ!?無理無理!私には!永遠にここで地味に暮らしたい!』
あんなエリート中のエリートが行く場所になんて、私みたいな平々凡々な奴に行けるはずない!
『実はな、あっちの人数が少し不足していてのぅ…こちらから成績優秀者を二人ほど派遣することになったんだよ』
ニコニコと話すのは、昔から警察の事を私に話してくれた、優しく、厳しい祖父。
少しがっしりとした体つきがまた、威厳に満ち溢れていた。
『そ、そんなぁ』
『ま、明日からだ。頑張るんだよ』
急すぎたよ…!!おじいちゃーん!!!
なんて、心の中で悪態をついていられたのは、この時までだった。
突然のことだ、そして、あの憧れの捜査一課に入れたことは、素直に嬉しいが。
足を引っ張り、父や祖父の顔に泥を塗ってしまう。そんな事があったら、自分の首が跳ねる
そんな事を考えただけで、ゾォ…と、血の気が引いていく。
(…うぅ…ここは腹をくくるのよ恵美!頑張るって約束したんだから!)
そう心に決め、【捜査一課】とかかれてあるドアの取っ手を掴んだ。
『……っ!…よし!』
パンっとほっぺたを軽く叩くと、大きな声でドアに向かって叫んだ。
『ほ、本日からこちら、捜査一課に配属されました、北山恵美です!失礼し、します!』
と、言って、勢い良くドアを開けた。
ガチャッ!
『……!』
中に入った瞬間、一瞬驚きで目を見張った。
中にいたのは、同じくらいの年齢だろうかーーー
椅子に座りながら、こちらを眺めている一人の青年に惹き付けられた
椅子に座っていても、すらりと伸びた長い足。組んでいても充分に長いことが分かる。
すらりと伸びた身長は、170くらいだろう。顔立ちは非常に整っており、目はきれいなアーモンド型。通った鼻筋。薄い唇。
そこからは、いいようのない男の色気というのが感じられた。
その美青年は、ドアの取っ手を掴んだまま固まっている自分を、まるで変なものをみるかのような瞳で見つめていた。
『……へ?あれ?』
目の前の青年は、黙ってこちらを見つめていた。
もしかしたら場所を間違えたのかもしれない。そう考え出す
室内には、なんとも言えない空気が漂っていた。
『……あ、あのぅ……。捜査一課は、ここで合ってますか?』
痺れを切らした恵美は、沈黙に耐え、黙って座る青年に問いかけた。
すると青年は、スッと目を細め
『…そうだが。』
(よ、よかったよぉ…!間違ってたら死ぬところだったよぉ…!!)
心の中で安堵していると、また空気が凍りつくような沈黙が流れた。
『…』
(う、…な、なんなのぉ…!?)
あまりにこわすぎて、涙が出そうになった
すると、ドアがいきなり開いた
『!?』
『直樹ぃー!!例の新入りちゃん、もう来たかーい!?』
大きな声で部屋に入ってきたのは、二十代後半といった所だろうーー
毛先を少し遊ばせて、ゆるゆるのネクタイにスーツを見に纏った男性だった。
(だ、誰ぇ!?)
パニックに陥った。するとその男は、目を見開かせて私の肩を突然ガシッと、掴んだ。
『…っ!?』
『君が恵美ちゃん!!?』
『っ!あ、はい!』
いきなり肩をつかんできた男の人は、ものすごく嬉しそうな顔をして訪ねてきた。
『本庁から配属されたっていう、天才ちゃんだよね!?うわ!めっちゃ可愛いじゃーん!よかったぁー!』
『…へ?』
『おっと!紹介が遅れたね!俺が捜査一課第一班班長、神谷翔吾!宜しくね♪恵美ちゃん!』
は、班長…と、いうことは私の上司となる方ですよね。
しかも、班長さん。ここは礼儀良くしなきゃ…!
『よ、よろしくおねがい、いたしまする!』
『…………』
しーーーーーん
や、や、や、やってしまったぁぁあぁあ!!!!
いやぁあぁああぁぁ!
何今の!
い、いたしまするって…………!
バカバカバカバカ私ー!!
緊張してるからってそんな事言うなんてぇー!
初日からバカだとか思われたよぉ!
『…………プッ』
…………え
『ぶあっはっはっはっはっは!!!!!』
『………へ?』
ポカーンとしていると、急に神谷さんが大笑いしだした
『ちょ、恵美ちゃんウケるんだけど!お、お、お願いいたしまするって…………!!はははははははは!!』
『……え。や、あのぉ……』
ど、どうしちゃったんですかぁぁあ
わ、私何かしたっけ……!
『ぶあっははははははは!チョー可愛いね恵美ちゃん!あはっはははは!』
床に転がるような勢いで笑いまくる神谷さん
おろおろしていると、怖そうな男の人は、更に目を怪訝そうに細めた
『……うるさいぞ神谷。少しは黙っていろ
』
『あはははは!ご、ごめんって直樹。恵美ちゃんが面白くてつい』
へらへらっと笑みを浮かべる神谷さん。そんな姿をみてる男の人は、やはり私を冷たく見つめてくる
『あぁそうだ。アイツは日下部直樹。この捜査一課きってのエースさ。』
『は…………はぁ』
神谷さんは、にこっと笑いながら紹介してるけど....すっごく冷たい視線で見てくるよぅ....
『…………』
この人がエースなんだあー…と考えながら見つめていると、日下部さんは、更に瞳を冷たく光らせる
『……何』
『..へ!?い、いえ...』
こ、怖いよこの人.....!!!
初めにカッコいいな~なんて思ったけど....
ちょっと冷たそうな人だよお....
『はは!思った通り、可愛いね恵美ちゃん!』
『い、いえ..そんな事ないですよ...』
あたしなんかが...と、付けたして言おうとしたけど、神谷さんの声によって遮られた
『ったく...あいつら遅いな...まだなのか?直樹』
.....あいつら???
訳も分からず、話を聞いてみる
『俺が知るか。どーせコンビニで道草してんだろうな』
変わらない無表情
『ちっくしょう!あいつらめ!今日は恵美ちゃんが来るから寄り道すんなよってあれほど言ったのによお!』
プンプン怒っている様子の神谷さん
..おそらく、“あいつら”とはここ、捜査一課のメンバーなんじゃないか...と、直感した
『あの..神谷さん』
『ん?なにかな恵美ちゃん!!』
『あいつらって....?』
『あぁ!!!それね!!』
さっきまで、プンスカ怒っていた神谷さんだったが、コロッと表情が変わった
『あいつらってね、ここのメンバーのことだよ♪もうちょいで来ると思うんだけど...奴らはサボり癖があってさ...困ってるんだよ...』
はァ...と困ったようにため息をつく
『.....』
チラッと日下部さんを盗み見る
やっぱり、冷たそうな瞳
無表情だ
『すみませーーん!!!ちょっとコンビニで雑誌立ち読みしてたら時間経っちゃっててビビったよ~』
『何言ってるのよ。ただ菓子選ぶだけなのに子供みたいにずっと迷ってただけじゃない』
バターン!!と、派手にドアが開いた。
何事かと思い、振り向いてみると二人の美男美女が....立っていたのだ