花と蜜蜂
なんか今すごく失礼な事言われた?
下手なナンパとか?
最近ご無沙汰だったから、対処に困る。
む、無視しよう。
そう決めて、向き直るとグラスに手を伸ばす。
と、すぐにその手に、大きな手が重ねられた。
えっ?
ギョッとしてると、同じテーブルに腰を落として、彼は顔を覗き込む。
「フラれて酒に走るとか、寂しい女だな」
「はぁ?」
ちょっとそれって初対面にしては失礼なんじゃないの?
てか、初対面でなくとも失礼だ。
流れる黒髪。
オレンジの照明に照らされて、それは曖昧に映る。
シャープな顔立ち。
切れ長の瞳に、端の上がった口角。
いわゆるイケメンの彼は、固まってるあたしを可笑しそうに眺めてから、不意に視線を上げた。
「山下も久しぶり」
あたし達のやり取りを見守っていた真由香が、あんぐりとその口を開ける。
「え……って、もしかして鳥井くん?」
「13年ぶり?こんなとこで会うなんて、すごいな」
……。
え?
と、と、鳥井って言った?
今……鳥井って……?