花と蜜蜂


どこをどうして、こうなったんだろう。

間接照明の柔らかな光が、優しく包み込む室内。
それに見合わない、大きなキングサイズのベッドに、天井に張り巡らされた鏡。


「ここ……どこ…?」



気が付くと、鏡越しに自分と目が合った。

慌てて飛び起きると、ズキンと頭の中が回るような感覚に、思わず顔をしかめた。


「うー……気持ち悪……」


乱れた自分のスカートを何とか整えて、ベッドの隅に座った。

と、その時だった。



「あ、気が付いた?」

「え?」


いきなり声をかけられて、ビクリと飛び跳ねながら顔を上げる。
その先に居たのは、たった今シャワーを浴びてきたと思われる、駆の姿。

濡れた髪を無造作にタオルで拭きながら、何の躊躇もなく隣に腰を落とした。


な、なんで駆がシャワー……。
てか、ココってどう見てもラブホ……。

なんで駆と?

ヤダヤダ、なにこのお決まりの展開……!
駆は奥さん居るんだよ?

これじゃ、不倫だよ。
泥沼だよぉ~。



「篠田」

「……」

「おい」

「……」


膝の上で重ねた両手に、ギュッと力を込める。
全身ガチガチだ。


「篠田お前、」

「きゃあああっ!ダメダメ!こんなの絶対ダメだってぇ」

「え、うわっ」


いきなり肩を掴まれたもんだから、その反動で思い切り駆の胸を突き飛ばしてしまった。

案の定、駆の体は見事にバランスを崩し、ベッドからはじき出された。



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