花と蜜蜂

ビクビクと、自分の体をギュっと抱きしめて、ベッドの隅まで後退りした。

綺麗な顔を歪めて、ベッドの向こう側から現れた駆は当然不機嫌で。

心底呆れた顔で、ため息をつきながら体を起こした。


「何そんなに警戒してんだよ。襲ったりしねーから」

「へ? お、襲わないの?」


キョトンとして、一気に体から力が抜ける。
なんだ、そうなのか。

でもそれならどうしてホテルなんかに……。


見上げると、あたしよりもキョトンとした駆がいて。
あたしの視線に気付くと、首にかけたタオルで口元を覆うと、視線を逸らした。




「たぶん覚えてないとは思うけど」

「う、うん」

「帰りたくないって駄々こねてたの、お前だからな」

「うん。……ええっ」


だ、駄々こねる……。
酔っぱらってて全然覚えてない……。

やっちゃったんだぁ。
心底自分が嫌いになりそう。


うな垂れたまま、ペコリと頭を下げた。


「……ご迷惑をおかけしました」

「終電終わっちまうし、タクシー使って送ってきたくても、お前住所言えねぇし」

「重ね重ね、申し訳ありません」


ダメだ……。

泣きそう。



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