花と蜜蜂
明らかに挙動不審。
真っ赤になったまま、固まっていると、それに気付いた駆がフッとその表情を緩めた。
「だから、必死に俺を拒んでたの?」
「な、なんの話?」
あたりまえでしょ?
昔付き合ってたからって、13年ぶりに会ったんだよ?
いきなりそんなふうにアプローチされても、簡単に信じられるわけ……。
「お前変わってねーのな」
「……え?」
嬉しそうに笑う駆。
その頬にえくぼを見つけ、胸が熱くなる。
「意地っ張りなとこ。あの時のまんま」
「どうせ、成長してないわよ。駆と違ってね」
はあ。
だからきっとこういう素直じゃない所を駆は言ってるんだってば。
わかってて直せない自分が悲しくなる。
「怒るなって。そこが可愛いんだし」
「ウソばっか」
チラリと視線だけで駆を見上げると、案の定すぐに目が合った。
恥ずかしくてすぐに逸らしたあたしの頬に、手が添えられる。
「ほんとだよ」
大きくて、あったかくて、華奢な手。
それでいて長い指は、骨ばっている。
昔と、同じだ……。
出来るの?
あの頃の続きなんて……。
「花、目……閉じて」
駆はそう言うと、極上に甘ったるい愛撫をくれた。
13年分の時間を埋めるように
駆のすべてが、あたしを満たしていく
心も体も、全部が溶け合って
その境界線だって曖昧で。
また、恋を始められる?
渇いてしまったあたしに、駆という蜜蜂を……。
駆となら、
恋をしてもいいのかもしれない。
覆いかぶさる駆から、あの夏の匂いがして
あたしはギュッと腕に力を込めた。
fin.