花と蜜蜂
「まぁ、理由はわからなくもないけど。10年目だっけ?サトシくんと」
だって、もしかしたら。
付き合って10年記念のクリスマス。
その日にされるかもしれないでしょ?
プロポーズ……。
「うん」
コクリと頷くと、真由香の大きなため息が聞こえた。
「健気だねぇ」
運ばれてきたマティーニで乾杯をする。
それを口に含みながら、真由香はにっこり笑った。
「でもそれが、花のいいところでもある」
美人でサバサバしてて、ビシッとスーツを着こなす真由香。
あたしとはまるで正反対の彼女だけど、なぜかすごく気が合って、週に1回はこうして仕事帰りに会っていた。
高校の時からの付き合いで、あたしよりもあたしの事を知っている。
「クリスマスに同窓会とかどうかしてるよね。ま、あたしは関係ないけど」
「真由香は行くんだ?」
「迷ってんだよね。だって花は行かないんでしょ?つまんないよぉ」
「あはは。そうだ、さとみと蘭子は?」
さとみと蘭子は地元に残った友達で。
ふたりはすでに結婚して、子供も産まれ幸せな家庭を築いていた。