花と蜜蜂
やっぱり家庭を持つと、こうして気軽に飲みに行くなんて事は出来ずにあたし達も遠慮して集まるのは本当に稀。
「ああ、ふたりは参加だって。やっぱりこっちに出て来ちゃうとなかなか帰れないからね。やっぱり行って来ようかな」
マティーニを飲み干しながら、真由香はクスクス笑う。
「ちゃんと写メするからね」
「え?」
「駆(かける)の事」
「あは。お願いします」
駆……か……。
鮮明に思い出す。
どこまでも続く青い青い空。
真っ白な入道雲。
耳をつんざくような、蝉の大合唱。
カラカラ回る、自転車の車輪の音。
汗ばんだ手と、はにかんだ笑顔。
駆は、いつでもあの時の夏を一緒に連れてくる。
あたしのせいで、ふたりは終わってしまった。
まだ付き合いも浅かったあたし達。
それなのに、あたしは、彼を試すような事を言ったんだ。
もしあんな事言わなかったら、今のあたしは変わっていたんだろうか。