花と蜜蜂
茫然とひとり、ベッドに座り込む。
ズシリと沈み込んだセミダブルのベッドに、そのまま体を投げ出した。
煌々と灯る室内灯が眩しくて、顔の上に腕を乗せる。
あたし、フラレタの?
10年目の記念日に。
サトシってそんなひどいヤツだったんだ。
こんな日に、それを言わなくてもいいじゃない。
ちゃんと会って別れも行ってくれなかった、あの男を思うと悔しくて涙も出ない。
ここで泣いて、サトシにすがりつく?
10年間あたしを縛っておいて、30になるこの年に放り投げるなんて。
今更あたしを拾ってくれる男(ヒト)なんて現れるんだろうか。
真由香みたいに、自分に誇れる仕事をしてるわけじゃない。
平々凡々のOLのあたし。
もっと早く、結婚を決めておけば、サトシに逃げられずに済んだかもしれない。
唇をキュッと噛み締めたその時。
枕もとの携帯が、鳴った。
慌てて確認する。
もしかしたら、サトシかも。
思い直してくれたのかも。
でも、それは真由香からのメールだった。
【後日、報告会してよね】
それだけのメール。
写真も添付されていた。
さとみたちと大きなジョッキを手にして、楽しそうに映っている真由香。
あたしも行けばよかったな……。
ため息をつくのと同時。
再び携帯が震えた。
また真由香から。
【カケル不参加】
あ、そうなんだ。
でも、駆の事、すっかり忘れてた。
画面をスライドさせると、まだ文字は続いていた。