魔法のキス

雄馬は、着替えるとすぐに新幹線で神戸に帰った。
おじさんは大丈夫だろうか。
命に別状はないと言っていたが、どんな状態なのか早く知りたかった。


それでも、仕事を休むわけにはいかないので、私は職場へと向かった。
心配で不安で暗い気持ちになるが、接客にそんな態度は出すわけにはいかない。


おじさんが又倒れるかもしれないという心配は、予測できたのではないか。
それに、雄馬が神戸からいなくなってから、おじさんひとりで会社を運営していたのだ。
やはり無理だったのかもしれない。


しかし、雄馬にはそれは一番わかっていることで、一番後悔していることだろう。
そう思うと、とても胸が痛んだ。


雄馬は、自分を責めているかもしれない

東京の大学へ入学したことを。


私が、東京に行かなくても、雄馬は東京の大学を受けたのだろうかと考えた。


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