巡り愛


「・・・あの、以前どこかでお会いしましたか?」


あいが大きな瞳でじっと僕を見ながら、僕を探るように訊ねた。


僕はそれに大きく頷く。


「うん、ずいぶん前にね」


あいは思い出せないような表情で不思議そうに首を傾げた。



そうだよね・・・



僕にキミとの記憶があっても、キミにも同じ記憶があるとは限らない。


僕はその事実に少し落胆しながらも、だからこそなお、ここであいと別れたくなくて、あいにもう一度同じ言葉を繰り返した。


「僕に時間をくれる?」



「・・・・・はい」


あいが戸惑いながら、それでも小さく了解の言葉をくれた。


「ありがとう!」


僕は嬉しくて思わず笑顔であいの手を掴んだ。


「あ、あの・・・」


あいが恥ずかしそうに頬を染めて僕の掴んだ手を見つめる。


「あっ、ごめんね」


僕は慌ててあいの手を放した。


「い、いえ」


あいが赤い顔のまま恥ずかしそうに俯いた。


・・・やっぱり可愛い。


そんなキミの顔は僕の心の中にいるキミと同じで。


僕はドキドキと鼓動を上げていた。



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