巡り愛


「それに今、北野は気付けたんだ。北野にとっては、よかったんだよ。もう一度、前を向いていけるはずだ」


北野はポロポロと涙を流して、声を殺して泣いた。


「本当はこの間、北野が話があるって言った時にちゃんと聞いてあげられていたら、よかったんだよね。結果、追い詰めるようなことになって、ごめん」


北野の肩の震えが治まった頃、僕は静かに口を開いた。


「・・・・・圭は悪くない。私がおかしくなってただけ。圭の言う通り、私、自分が許せなかった。未遂で済んだとは言え、ミスはミス。どうしても自分が許せなくて、どんどん自分に自信がなくなって・・・なぜか急に圭の声が聴きたくなって、電話したの。でも繋がらなくて・・・そうしたら、圭の顔が見たくなった。どうしてか自分でもわからないけど、ずっと忘れてたのに、そういう時に心に浮かんでくるのは圭だった」


そこまで言って、北野が気持ちを吐き出すように息を吐いて。
俯いていた顔を上げて僕を見た。


「圭の顔を見たら、もう何年も前に終わってたはずなのに、やっぱり圭のことが好きなんだって自覚したの・・・でも、圭にずっと想っていた人と出逢えて、付き合ってるって言われて・・・・・そしたら、心の中がグチャグチャになって・・・気付いたら・・・あんなものを・・・口に・・・・」


「北野、もういいよ」


僕が遮った言葉に北野はゆるゆると力なく首を振った。


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