巡り愛
~♪~♪~♪~
時計がちょうど9時半を差した頃。
ガラスのテーブルの上に置いていた携帯が着信音を鳴らした。
忘れ物がないか最終確認していた私は、慌てて携帯を掴んで通話ボタンを押した。
「もしもしっ」
声まで慌ててしまって、恥ずかしい。
『おはよう、あい。もう出掛けられそう?』
私の慌てた声に圭さんはくすっと微かに息を零して笑って、優しい声で訊いてくれた。
「はい、大丈夫です」
『そっか、よかった。今、あいのマンションの前にいるから降りてきて』
「は、はい。すぐに行きますね!」
すでに迎えに来てくれているという圭さんに、私は慌てて携帯を耳に当てたまま立ち上がった。
『慌てないで、ゆっくり出ておいで』
クスクスとやっぱり吐息を零すように笑う圭さんはそう言って、電話を切った。
ゆっくりなんて言われても、圭さんを待たせていると思うと、いてもたってもいられなくて、私は慌てて並べておいて荷物を掴んで玄関へ駆け出した。
あっと思って、一瞬、洗面所に入って、鏡の中の自分をさっとチェックする。
慌てたせいで少しだけ乱れた前髪を整えて、もう一度、ワンピース姿の自分を確認する。
よし!大丈夫だよね?
高原でいっぱい歩くだろうから、低めのサンダルを履いて私は玄関を飛び出した。