巡り愛


お弁当箱を片付けた後、私達は湖から高台へ延びる丘を登った。


見晴らしのいい場所で、展望台になっている。
夜は絶好の夜景スポットらしい、その場所に伸びる少し長い坂を、圭さんと手を繋いで上る。



―――…ふと。


胸のあたりが苦しくなって、私は思わず足を止めた。



「どうしたの?」


一歩先にいった圭さんが、立ち止まった私を振り返る。
私はドキドキと不自然に乱れる鼓動に、胸に手を当てて深呼吸した。


「ちょっと・・・苦しくて。変だよね」


息切れするような急な坂じゃない。
なのに息切れしている自分がどれほど運動不足なんだと恥ずかしくなった。


「・・・・・胸が苦しいの?」


私の言葉に圭さんが息を呑んで、眉を深く寄せた。
急に見せたその表情がなぜかとても不安そうで。
逆に私の方がびっくりして、慌ててしまう。


「大丈夫。運動不足だよね、こんな坂で息切れするなんて」


苦笑いを浮かべて、そう言った私に圭さんは余計に不安そうに眉を顰めた。


「・・・よくこんな風に胸が苦しくなって、息切れするの?」


「え・・・ううん!そんなことないよ。ちょっと走ったりしたらすぐ息切れしちゃうけど、それも運動不足のせいだと思うし」


「・・・・・・・・」


言い訳するように早口で言う私に、圭さんの表情は曇ったままで。
どうしてこんなに圭さんが不安そうな顔をするのか、私は別の意味でドキドキした。


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