巡り愛


ドアを開けると、本当にそこには圭さんがいて。
受付の中に座っている中野さんと笑顔で談笑している。
そして私が出てきたことに気付くと、ふわっと優しい笑顔を私に向けた。


その笑顔にドキンとして、ギュゥッと甘く心が掴まれる。


何度見ても圭さんの笑顔には毎回ドキドキするなんて、ホント私は重症だ。


頬に上った仄かな熱を感じながら、私は圭さんの前に立った。


「お疲れ様、あい」


にっこりと笑って、そばに立った私を優しく見つめてくれる圭さんに私も笑顔を返す。


「迎えに来てくれるなんてどうしたの?」


「今日は珍しくこの時間に仕事が終われたから、あいと一緒に帰りたいと思って。ダメだった?」


優しい笑顔のまま『ダメだった?』なんて言う圭さんに頷けるわけもなく。
もちろん迎えに来てくれたことが嬉しいし、一緒に帰りたいと思ってくれたこともとっても嬉しいから、私は小さく首を左右に振った。


「ありがとう」


小さな声で呟くように言ってしまったのは、中野さんが興味深げに私達を見ているから。
きっと私の頬はさっきよりも真っ赤になっている。


「水瀬ちゃんってば、照れちゃって。ホント可愛いな」


「だよね。あい、可愛すぎ」


二人から『可愛い』なんて言われて、私はますます照れてしまって。
圭さんの鞄を持たない方の手を引いて、私はそのままいそいそと正面玄関へ向かった。
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