巡り愛


「中野さん、お疲れ様でした。お先に失礼します」


ドアの前でちらっと振り返ると、中野さんはやっぱりニヤニヤしながら、私達に手を振って『お疲れ様』と答えてくれた。


圭さんと二人で図書館を出て、すぐに掴んでいた圭さんの手を離すと私はふぅっと大きく息を吐いた。


「あい?・・・ごめんね、迎えに来たの不味かったかな?」


「ううん、そんなことないよ。圭さんが迎えに来てくれてすごく嬉しかったんだけど・・・中野さんに見られてたから、ちょっと恥ずかしかっただけ」


「あい、ホント可愛いね」


不安げに訊いてくる圭さんに私は俯き加減で答えると、圭さんはクスッと笑って私の頬を指先で撫でた。
びっくりして顔を上げると、嬉しそうな笑顔の圭さんと目が合う。
恥ずかしいのと、嬉しいのと・・・色んな気持ちがごちゃ混ぜになった私は困ってまた俯いてしまった。


「じゃあ、帰ろうか。どっかでご飯でも食べていく?」


私の手を取って、指先を絡めて繋いでくれる圭さんにつられるようにして歩き出した私は、やっぱり嬉しい気持ちが大きくて、圭さんの言葉に「うん!」と笑顔で頷いた。


< 123 / 304 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop