巡り愛


二人で明るいうちに一緒に帰ることが珍しくて、私はすごく嬉しくてはしゃいでいた。
私が遅番の時はいつも圭さんが迎えてきてくれて一緒に帰るけれど、その時は真っ暗だから、こうして明るい時間に二人で帰ることが、とても新鮮だった。


駅の近くにある圭さんが時々同僚の人と行くというレストランで食事をした。
気軽なイタリアンのお店で、とても美味しくて。
一緒に食べているのが圭さんだということも最高のスパイスになっていると思いながら、私は圭さんとの何気ない会話を楽しみながら、食事を堪能した。


「時々ここに一緒に来るのは矢野っていう同期の医師なんだけどね。大学の時からの付き合いだからもう結構長いんだ」


圭さんがそんな風にお友達のことを話してくれるのが珍しくて、私は興味深げに頷きながら聞いていた。


でも・・・こういうお店に一緒に来るのって女の人なのかな?


無意識に湧いた疑問に心がチクリと痛んだ。
こんな小さなことを気にしてしまうなんて、私ってこんなにヤキモチ妬きだったかな?
圭さんの話を聞きながらそう思っていると、圭さんが不意に『ん?』と首を傾げて見せた。


「あい、どうかした?」


「・・・・・・・・」


私のちょっとした表情の変化にも気づいてくれる圭さん。
嬉しいけれど、その分、自分の心の狭さが恥ずかしくて、つい視線を逸らせてしまった。


「あい?」


心配そうに顔を曇らせる圭さんに、私は顔を横に向けたまま小さく呟いた。


「矢野さんって・・・女の人?」


「え?矢野は男だけど・・・・・あい、矢野が女だと思ったの?」


矢野さんが男の人だと聞いて、私は恥ずかしさで一気に顔が真っ赤になった。
勘違いにもほどがある。
勝手に女の人かもと思って、モヤモヤしていた自分が本当に恥ずかしい。


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