巡り愛


食事を終えて、私達は手を繋いで駅に向かった。
何だかとても幸せで、私の歩調に合わせて私の隣をゆっくり歩いてくれる圭さんを見上げると、圭さんも私を見下ろしてにっこりと笑った。


「また来ようね」


そう言ってくれる圭さんに頷いて、ギュッと手を握ると、圭さんも力を込めて握り返してくれる。
そんな何気ないことがとても嬉しくて、堪らないくらい幸せだった。


二人で駅の改札を抜けて、ホームへ上がる階段を上がる。


半ばくらいまで階段を上がったところで、急に鼓動がドキドキと大きく刻みだした。


不自然な動悸に私は思わず足を止めて、胸元に手を当てた。


「あい?・・・・・・苦しいの?」


同じように足を止めた圭さんが胸を押さえるようにする私を見て、不安そうな声で訊いた。


「うん、ちょっと動悸が・・・ごめんね、ホント運動不足だな」


駆け上がったわけでもないのに、階段を数段上がっただけで動悸がするなんて。
恥ずかしくて、苦笑いを浮かべながら答えると、圭さんはますます不安そうな顔をして、私をじっと見ている。


「圭さん?」


その瞳がなぜか揺れているように見えて。
私は小さな声で呼びかけた。


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