巡り愛


「・・・・・あい、検査してみようか」


「え、検査?」


思いがけない言葉に私はびっくりして、目を瞬かせて訊き返した。
圭さんの表情は曇ったままで、でもとても真剣で。
私の心に不安がよぎった。


「この間の高原でも急に動悸がしただろ?大したことないにしても、一度ちゃんと検査しておいた方がいいと思うんだ」


さっきまでの笑顔から少し硬い表情に変わったままの圭さんは、真剣な声でそう言った。


「でも・・・ただの運動不足だよ?」


「それは検査してみればわかるよ。何もないなら、安心だし・・・ね、一度検査しよう?」


圭さんの真剣さに圧されるように私は戸惑いながらも頷いた。


なぜこんなにも圭さんが心配するのか、よくわからなかったけど。
お医者様である圭さん、しかも心臓外科という立場の彼がそこまで言うなら。
それで圭さんの心配が払拭されるなら、圭さんが安心するなら私もその方がいいから。


私は圭さんが検査の予約を取ってくれるという言葉にもう一度、小さく頷いた。



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