巡り愛


矢野先生からの問診を受けた後、私は検査のための部屋へ案内された。
一緒に診察室を出ようとした圭さんは矢野先生に呼び止められた。


「後で行くからね」


そう言って、私を安心させるようにポンポンと軽く頭を撫でてくれた。
その手がとても優しくて、私は笑顔で頷いた。


矢野先生に軽く会釈をして、案内してくれる看護師さんの後について診察室を出る。
検査のための部屋に案内された私は検査のための機械がたくさん並ぶその独特な雰囲気に、なんとなく緊張してしまう。


「まずそちらでこの検査服に着替えて下さいね」


看護師さんから手渡されて薄いピンク色の検査服に着替えた私は、待っていてくれた看護師さんに指示された椅子に座った。


「まずは採血からさせて下さいね」


椅子に座った私の手を取って、手際よく準備を進める看護師さんは、あっという間に採血を終えた。
さすがプロなんだな・・・なんて、呑気に感心していたんだけど。


「水瀬さんって桐生先生の彼女なの?」


不意にかけられた彼女からの質問に、一瞬、呆けてしまった。



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