巡り愛
「え?・・・あ、はい。そうですけど・・・」
急な質問の意図がわからなくて、私は戸惑いを隠せないまま小さく答えた。
脳裏に以前、大学のカフェテリアで隣になった看護師さんらしい二人の会話が浮かんだ。
あの時の看護師さんも圭さんのことを好きだとほのめかしていたし、圭さんが看護師さんの間で人気があるのは想像がつく。
今目の前にいる彼女も圭さんのことが好きなのだろうか?
「急にごめんなさい。でも羨ましいわ。桐生先生ってあの見た目だし、仕事もすごくできるし優しいものね。だけどさっきの先生の態度にはちょっとびっくりしちゃった。普段はまったく動じない先生だけど、あなたがいるとあんな風になるのね」
さっきの診察室での様子を思い出したのか、看護師さんはクスクスと笑い出した。
そしてもう一度「羨ましい」と言って、私に笑いかけた。
その表情にも声のトーンにも嫌味みたいなものはなくて、私の変な勘繰りは取り越し苦労だったんだと思った。
圭さんのことを好きな看護師さんはきっと何人もいるだろうけど、今私の目の前で優しく笑っている彼女は少なくとも私のことを敵視していない。
私はホッとしたような気持ちで、彼女に笑い返した。