巡り愛


次は心電図を取るからと言って、機械が周りにたくさんあるベッドに案内された。
そこには検査を担当してくれると言う女性がいて、私が『よろしくお願いします』と言うと、会釈を返してくれた。


その時、検査室のドアをノックする音が聞こえて、圭さんが顔を覗かせた。


「あい、大丈夫?」


私のそばに近づくと圭さんは私の髪にそっと手をのせて少し心配そうな顔をした。
私が笑顔で「大丈夫」と答えると圭さんも笑顔を見せてくれた。


「桐生先生、水瀬さんのことが大切だからって心配し過ぎですよ。どんな検査をするか先生もよくわかってらっしゃるでしょ?」


検査担当の女性が検査の準備を進める横で手伝いながら、私達を見ていた看護師さんが笑いながら言った言葉に、圭さんが少し照れたように苦笑した。


「ごめん。確かにそうだけど、どうしてもね。・・・あい、僕は隣の部屋にいるから。和田さん、じゃあお願いします」


圭さんは大きなガラスの窓で仕切られている隣の部屋を指差しながら、そちらの部屋へ移動していった。


その圭さんの横顔が少し赤く見えたのは、気のせいじゃなない。


圭さんが和田さんと呼んだのは検査担当の女性で、彼女は『はい』と答えると私にベッドに横になるように指示した。


横になる私の耳元で看護師さんが『先生、照れてるわね』と言って小さく笑った。




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