巡り愛
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「不整脈だな」
あいの検査で出たそれぞれの数値を見ながら、矢野が口を開いた。
あいが検査を受けてから6日目のお互いの仕事が一段落した午後。
検査の結果に二人で目を通して、矢野が診断を下した。
僕にもその診断に異存はない。
あいは確かに不整脈の兆候が見られた。
僕は予想通りの結果に、苦いものを吐き出すような深い溜息を吐いた。
「何をそんなに深刻になってんだ?不整脈と言っても、軽いものだし、命に係わるよな怖い類のものでもないだろ」
「・・・そうだな」
矢野の言う通り、あいの不整脈は軽いものできちんと見守れば、何も怖いものはない。
不整脈は治せる病気だし、こんなに過度に心配する必要もない。
それは僕にも十分わかっている。
でも・・・・・あいが心臓の病に襲われている事実が僕には恐怖なんだ。
それが軽いとか重いとかは関係ない。
あいがまた心臓に病を抱える身だってことが、僕に重く伸し掛かっていた。