巡り愛
僕は矢野の言葉に返す言葉が見つからなかった。
あまりにもストレートな矢野の言葉は、僕の弱い心に矢のように突き刺さって。
真剣な顔のまま僕を見据える矢野に、僕は瞼を閉じて深く息を吐いた。
愚かな僕の弱い心を吐き出すように。
「そうだね・・・矢野の言う通りだ。僕は今度こそあいを失いたくないから、心臓外科医になったんだ。矢野の言う通り、僕が迷って逃げていることは間違ってる・・・」
心の中に湧きあがった想いを口にするように、僕ははっきりとした口調で言葉にした。
そうだ・・・たとえ、あいがまた心臓病であっても、今度こそ僕がこの手で守るんだって決めていたのに。
僕は何を恐れていたんだろう。
あいは僕の前から消えたりしないのに。
そのために僕は今まで生きてきたのに。
彼女を守る術を手に入れるために生きてきたのに。
それにあいは“あの頃”とは違う。
あの頃のように重い心臓病ではなくて。
今なら治すことも、上手に付き合っていくこともできるものだ。
始めから怖がる必要なんてなかった。
だって、僕が今度こそあいを守るんだから。