巡り愛
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朝からどんよりと重たい雲が垂れさがっていた。
午前中の業務予定を半分ほど終えた私は、窓を打ち付ける雨音に顔を上げた。
泣き出しそうだった空からは、バラバラと大粒の雨粒が降り下りてきていて、あっという間に窓の外を濡らしている。
かなり降りが強いな。
お昼休みまでに小降りになるといいんだけど・・・そんなことを呑気に考えながら、私は手元の新しく入庫した本のリストに視線を戻した。
バラバラバラ
窓や地面を打ち付ける雨音がなぜかやけに大きく聞こえる。
いつもは気にしないその音が、今日は耳について業務に集中できなくて。
無意識に耳に届いてしまうその雨音を聴いていると、心の中がモヤモヤとしてきて、ドキン、ドキンと鼓動が不自然な波を打ち始めた。
ただ座っているだけなのに、不整脈が起こるもの?
先日病院で聞いた“不整脈”の症状。
この不自然な鼓動の波はたぶんそれだと思うけど。
走ってるわけでも、坂を上っているわけでもないのに。
ただ椅子に座って書類に視線を落としているだけで、どうしてこんなに痛いくらいに鼓動するんだろう?
私は痛みさえ覚えてきたその鼓動を押さえるように胸に手を当てた。
ザワザワと頭の中で何かが揺れて。
モノクロの記憶の断片みたいな風景が浮かんできては消える。
古い木造の建物。
庭のような場所。
ベッド。
激しい雨。
・・・・・ブローチ?
な・・・に?
ドクンッと一際大きく鼓動が波立った。