巡り愛


「あいちゃんの同僚の子が付き添ってきてたんだけど、あいちゃんが『ブローチ、探さなきゃ』ってうわ言みたいに言ってたって・・・ブローチってさ・・・あのことだよな?」


「・・・・・ブローチ?」


矢野の言葉に僕は息を呑んだ。


矢野がいう“あのこと”とは、先日僕が話した前世の記憶の中に出てきたものを差しているんだろう。
ブローチというワードで思い出すのは、僕にもそれしか心当たりがない。


でも、あいはそのことを覚えていないはず。


“あの頃”のあいの命が消えた原因になったブローチのことも、その状況自体も思い出していないはずなのに。






あい・・・






キミは何か思い出してしまったの?






あんなつらい記憶は思い出さなくてもいいのに・・・


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